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October 15, 2004

アメリカの嘘。

朝、起きたら雨だった。Ann Arborで1日中雨の日は珍しい。

12時~1時半までCIC Seminar。今日は学生の活動発表の日だったらしく、
去年のCIC履修生がこの1年に取り組んだプロジェクトを発表していた。
夏にケニアに行ってIT環境の改善に努めたチーム、地域図書館を1人で
コンサルティングした人、マケドニアのアメリカ大使館のサポートをした学生…。

1時半からはICOS Seminar(組織論ゼミ)。組織における無意識の
「差別」を統計調査から浮かび上がらせていく、というテーマだった。

今学期のICOSは、なぜか差別是正に関する話が多い。日本で人種問題に
直面するのは稀だけど、組織の中の「女性」という問題はそれに近い気がする。
昔、学園祭の委員長をやっていた頃の思い出が火傷の跡のように痛む。
いつか自分が管理職に立った時、今学期のICOSが活きたらいいな。。


Ann Arborに来た時、最初に心に浮かんだ一発目の感想は、
「なんて楽園のような場所なんだろう」というものだった。

東京よりも良い治安、知性あふれる上品な街と店。美味しい料理。
多様性を真っ向から標榜し、全米で最もラジカルにAffirmative Action
(積極的差別是正措置)を推進するリベラルなミシガン大学の存在。
マイノリティが安心して生きるには、これ以上の場所はないと思った。

けれども、もちろん楽園に嘘はつきもの。1年もこの街で生活すれば、
きっと「Ann Arborの嘘」も見えてくるに違いない、と醒めた部分もあった。


…はたして、1年間の生活の末に実際に自分の眼に映り始めたもの。
それは、「Ann Arborの嘘」というよりは「アメリカの嘘」に近かった。

個人主義と実力主義。
アメリカが「夢を追い求める地」と呼ばれるための、「アメリカン・ドリーム」の
根源を支えていた文化と思想が、いま、静かに揺れ始めているのだ。

今日のICOS Seminarの終了間際、セミナーの主宰者で組織論の大御所である
Michael Cohen教授が、いつもの仙人のような口調で、優しく柔らかくゆっくりと、
こうコメントした。

「つまり、アメリカの最も伝統的で保守的な価値観である個人主義と自由競争は、
それが差別と抑圧を生み出す原因になるということですよね…?」

それは、僕自身が外国人としてプロフェッショナル・スクールに学ぶ1年間で、
最も痛烈に感じていたことでもあった。研究志向の学術系大学院ではなく、
MBAと同様の実務系大学院で学んでいると、外国人がどれだけアメリカ社会に
入り込めないかが良く分かる。それは、「外国人だから入れない」のではなく、
「外国人がアメリカ人と同じ土俵で競争をさせられる」から、入り込めないのだ。

スタートラインの違う外国人とアメリカ人をアメリカで競争させれば、
結果は火を見るよりも明らかだ。けれども、個人主義と自由競争の思想は、
言語・文化・情報環境といったハンディをすべて「無かったこと」にしてしまう。
「誰もが平等に競争するから、出た結果は実力次第」というタテマエなのだ。

一方で、アメリカ人の多くがこの「アメリカン・ドリーム」を信じざるを得ない状況に
置かれているのも確かなのだ。時給5ドル50セントの法定最低賃金で朝から晩まで
働かされ、大学に行けずに日々を過ごす数多くの肉体労働者やその子供達が
心のよりどころにするのは何だろうか。

「いま頑張れば、実力次第で報われる。アメリカはそういう国なのだから。」

何千万人ものマイノリティ、女性、そして外国人が、自分にそう言い聞かせ、
今日もアメリカで個人主義と自由競争を夢見ている。そして同じ日に彼ら・
彼女らは上司から勤務成績を低く査定され、同僚から厄介者扱いされるのだ。

投稿者 kasuga : October 15, 2004 09:20 PM

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コメント

ハンディを無かったことにしてしまうのはどんな方法で誰によって行われているんだろう?
特に誰ということがなければ、どういう仕組みでハンディが無かったことにされてしまうんでしょう?
もし知ってたら教えてください。
というのは、ハンディを無かったことにされているということに大半のアメリカ人が気づいている/前提として生きている、と思ったので。
気づいてない人がいるというのに驚きました。

でもこのバランスって難しいよね。
規制産業にある企業がその競争力を失うように、
競争における自由度を狭くして保護すると大抵の人間は弱くなってしまうんだよね。
アメリカの伝統的で保守的な価値観のおかげで今のパワーがあるんだよなぁ。

投稿者 ヒロナオ : October 16, 2004 10:53 AM

「自分のことは自分で決められる」「競争の機会は誰にでも与えられてる」
と考えてしまうために、社会的ハンディを負っている人が負けても
「競争の結果はすべて自分の責任」「競争に参加しなかったあなたが悪い」
という風に切り捨てられてしまうんですよね…。

差別と抑圧の環境下では、自分のことを自分で決められないことは多いし、
競争のルールや評価が勝者に都合の良いように歪められていることも
少なくないのだけれども。

みんな気付いているけれども、気付かないふりをしないとやっていけない。
アメリカはそんな一面を持っているな、と感じることが多いです。


バランスは確かに難しいですよね。
今のアメリカの株高も、富裕層に対する減税で実現されてますし…。
また一方で、そんなアメリカの強さが「長続きする強さ」なのかどうか、
不安に思っている人達も多いみたいです。

投稿者 かすが@みしがん : October 16, 2004 01:25 PM

アメリカのやっていることはすべて正しいんです。なぜなら、アメリカがやっていることだからです。

アメリカに反旗を翻すような言動はアメリカ国内では許されません。なぜなら、アメリカに反旗を翻すのはイスラムのテロリストと相場が決まっていて、イスラム教を信じる自由はアメリカにはないからです。

……春日さんの記事は、今の自分の気分を見事に代弁しているみたいです。

今日これから、戦争にとりかかります。最強の男だけが生き残り、残りは一敗地にまみれて甘美な死を味わう世界へようこそ。

……世の中資本主義だけじゃねぇ!共産主義だってある。


私はアドルフ・ヒトラーを信奉します。○○人を全部強制収容所へ送る行為を激賞します。
……と大声で、それこそ国会議事堂の演壇に立って言ってみたいものです。

投稿者 きたじま@織姫 : October 17, 2004 02:48 PM