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November 22, 2005

ふぉーちゅんくっきー

↑こんな画像を見つけたので、今日はフォーチュンクッキーの話。(いや、こんなん出てきたらホント怖いよねぇ…。いま食べたのは何!?みたいな。)


中華料理の最後に出てくるフォーチュンクッキー。何年かに一回、人生の転機に思いもかけないフォーチュンクッキーを手にして、運命にドキッとさせられることがある。

某アーティストの事務所からお誘いを受け、そこで働くかどうか激しく迷っていた頃。旅先の中華料理屋で手にした「The trouble with resisting temptation is that you may not get another chance(誘惑に抗えば、チャンスは二度とやってこないかもしれない)」というメッセージを見て、帰国後すぐに受諾の電話をかけた。

留学して最初の学期末、何十枚もの英語レポート書きに連日徹夜で追われていた時のこと。締め切り直前にあと1~2枚、というところで心が折れそうになり、パソコンの前から逃げ出すように食事に出たのだった。近くの中華料理店でベトナム麺を食べた後、出てきたフォーチュンクッキーは「Many ideals are becoming real(理想は、もうすぐ現実に)」。奮い立った気持ちで家に戻ると、最後の1枚は1時間で書き上げることができた。

人生の節目節目に出会うフォーチュンクッキー。その時の小さな紙切れは、今でも捨てられずに部屋の片隅にしまってある。


19世紀末に世界初のフォーチュンクッキーを考案したのは、実は「萩原 眞」というサンフランシスコ在住の日本人だ。(詳しい話が徳井いつこの『アメリカのおいしい食卓』http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582829643/という本に載ってます。この本はとっても面白くて、オススメの一冊!)禅宗徒だった萩原が、日本文化を分かりやすく伝えるためにお茶請けの煎餅にそっとしのばせた紙切れ。幸せな言葉との偶然の出会いは、萩原が伝えたかった仏教的な「縁」なのかな?と想像してみるのもなんだか楽しい。

それでも、最近はあまり面白くないクッキーも増えてきた。言葉が説教くさかったり、ただの豆知識だったりすると、「あ、ハズレクッキーだ」と思ってしまう。“コツコツ努力することで大きな成功が!”とか“成功してるあなたの先に、大きな落とし穴が待っている”なんて言われても、感慨なく「ふぅん」と思っておしまいだ。

やっぱり安物のクッキーは適当に作ってるんだろうなぁ、とため息をついていたら、つい先日食べたフォーチュンクッキーから「Some fortune cookies contain no fortune(一部のフォーチュンクッキーには幸せが入ってない)」というメッセージが出てきた。あなた、分かってるじゃないの(笑)!

投稿者 kasuga : 01:28 PM | コメント (0) | トラックバック

November 21, 2005

心のヤリ逃げ?

「いつでも気軽に相談できて慰めてくれる男」って、「いつでも気軽にヤラせてくれる女」と何が違うんだろう?両方とも「都合のいいオトコ・オンナ」じゃないの?なーんて思ったりする今日この頃です。ちょうど世間で言う「軽くてウザいオトコ」と「重くてウザいオンナ」との対比とも似てる気がしちゃうしね。

相談されたり相談したり、っていうのはモチロン素敵な関係だ。「ねぇ、ちょっと話聞いてよ~」なんて言われたら、喜んでグラス片手に付き合います。一晩でも二晩でも、貴女が泣き疲れて眠るまで…!

でも、そんな“一夜の関係”の翌朝から愛するオトコに再び寄り添い、喧嘩した時にまた相談に来るんだったら、せめて“ヤリ逃げ”の自覚はもってよねぇ……と、「いい人」歴7年、“心のヤリ逃げ”された回数20回超の男の叫びでした。


…いや、でも実際さ、素敵なお姉さんの愚痴を聞けるのって最高に楽しいよね(笑)?

投稿者 kasuga : 12:40 AM | コメント (0) | トラックバック

November 09, 2005

ベンチャーと企画屋・技術屋

ベンチャー起業を夢見る皆様に贈る、体験談的な怪談。
(2日連続でヘビーなネタでごめんなさい。次はもうちょっとフツーの話にします。)

    ***

この間、少し気が滅入る話を聞いた。ベンチャーをやってる友人が面倒ごとに巻き込まれている、というもの。登場人物を聞いていると、会長が刺殺された詐欺会社の元重役とか、他の会社を乗っ取って多額の現金を奪い取った会社の役員とか、恐ろしい面々がひょいひょいっと出てくる。といっても別に怪しいビジネスの世界ではなく、ごくごくフツーのITベンチャー業界の話。件の友人も単なるまっとうな技術者だ。


以前自分でITベンチャーに携わっていたころ、長くお世話になっていた投資ファンドの方々が「技術屋」「企画屋」という呼称をよく使っていた。実はこれは警戒心を込めた蔑称で、技術屋さんは「技術ばっかりでビジネスモデルが立てられない人たち」、企画屋さんは「企画を立てるばかりで差別化の技術力が無い人たち」のことを指している。

この「企画屋さん」の世界が、実はちょっと怖い。

ビジネスモデルや経営戦略を立てるのは楽しい。クリエイティブな思考がたくさんできるし、成功した時のことを考えればわくわくする。大きな夢を真正面から照れずに語れるし、守旧的な他社を出し抜く快感もある。独立心やチャレンジ精神の強い人には、夢のような世界に思える。

では、どうしてそこにヤクザまがいの人々が出てくるのだろう?


企画屋のビジネスモデルを聞くと、多くに共通する3つの特徴がある。
(a)収益モデルや集客モデルのイノベーションであって、技術的には極端に平凡(もしくは技術的に実現不能)
(b)後発他社の追随をかわす方法が、単純な規模の経済(スケールエコノミクス)しかない
(c)労働集約的なビジネスモデルである(人の労働量と収益の関係が一次関数になっていて、爆発的な指数関数ではない)

…要するに、差別化の核となる決定的な技術力を持っていないのだ。

これは、起業当初にはあまり問題にならない。革新的なビジネスモデルだから真似する他社もいないし、事業規模が小さいから既存の大手との住み分けも簡単だ。だから会社は順調なスタートを切り出すように見え、しばらくは幸せな時を過ごせる。


ところが、いったん会社が急成長を始めると、途端に状況が変わってくる。

まず、後発の競合他社が参入してくる。彼らは「真似して改善」を専業としているので、ものすごい勢いで追い上げてくる。そして同時に、既存の大手と住み分けできなくなる。事業が十分拡大してしまって、既存大手と競合せざるを得なくなってしまう。

この結果、自分のベンチャーは激しい競争にさらされることになる。しかし、差別化をしようにも技術力では勝負が付かない。真似しようと思えば誰でも真似できてしまう。事業の縄張りを広げるにはどうすればいいのか?


…そう、ここで縄張り争いの専門家達が出てきてしまうのだ。

技術力で決定的な差がつかない場合、どうしても「泥臭い」縄張り争いにならざるを得ない。相手が気付かないように出し抜いたりカモにしたり、という世界になってくる。いろいろな形でプレッシャーをかけるというケースもある。

もちろん、そういう世界で勝負する覚悟があれば、それに越したことはないと思う。株式の短期売買だって「いかに他人を出し抜くか」だけで損益が決まる。泥臭い勝負の中で自分のスペースを確保する野心は、実に正当だ。

けれども、そういう覚悟が無い人が「企画屋」の世界に飛び込むと、本当に痛い目を見る。企画屋さんの95%以上は人格的にも優れた良い人たちばかりだけれど、残る5%にすごーーく怪しい人たちがいるのも確かなのだ。

自分自身もITベンチャーに携わっていた頃、企画屋さんの怪しい人たちと出会ったことがある。たとえば、当時は飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長していた有名な学生ベンチャーの社員たち。彼らとはわずか1時間ほど喋っただけだったのに、「気持ち悪いハイテンションの人々」という印象が何年も脳裏に焼き付いていた。奇妙なポジティブさと自信、そして見栄と強がり。数年後のある日、久しぶりに彼らの創業者の名前をニュースで見かけた。凶悪犯罪で警察に逮捕・起訴された、というニュースだった。

    ***

誰だかは忘れてしまったけど、超大手企業の社長さんが「ビジネスで成功する秘訣は『誰と付き合うか』ではなく『誰と付き合うべきでないか』を判断する能力だ」と言っていたのを覚えている。ベンチャーを志す人には、とても大切な教訓のように思う。

ビジネスを成長させる上で、決定的な技術力や商品企画力は自分の身を守る大きな武器になる。差別化の原動力になるからだ。泥臭い世界でのし上がって勝負するか、技術力や商品力で「一生かかっても追いつけないほど」他社を引き離し続けるか。あるいはフェラーリやアキュフェーズ、アブ・ガルシア社のように、ニッチの高級品市場で勝負するのか。

「企画屋」の世界に足をすくわれないためにも、どの道を選ぶのか、覚悟はとても大切だと思う。

投稿者 kasuga : 04:41 PM | コメント (0) | トラックバック

November 08, 2005

「ホワイトバンド詐欺論」に呆れる

ずーっと前から書こうと思っていたこと。

以前、ネット上で「ホワイトバンドは詐欺だ!」というページを見て、
「何これ!?」と、呆れてひっくり返ってしまった。
http://whiteband.sakura.ne.jp/

ホワイトバンド詐欺論の主張は「ホワイトバンドは貧困撲滅を謳いながら
寄付はゼロ、これは募金詐欺だ!」というものなのだけど、それって
当たり前なんじゃないの?非営利活動へのファンディング(資金調達)って
そういうもんでしょ?と、口をぽかーんと開けてしまった。

「貧困撲滅⇒寄付」だなんて、「芸術振興⇒鑑賞施設の建設」というのと
同じくらいチープな発想。社会的なコンテキストを作っていくことこそが
非営利活動の本質であって、資本主義社会の大事なポイントなのに。

ホワイトバンドなんて別に無理して買うもんじゃないけど、最近流行りの
「詐欺論」はいくらなんでもメチャクチャだと思ったので、とりあえず
「ホワイトバンド詐欺」のページに突っ込みを入れてみます。

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◆売上の4割が流通費、3割が原価、残りの3割はNPOの活動資金に使われます

⇒物品販売を通じたNPOの活動資金調達。どこでも見かける一般的な
スタイルなので、これ自体は特に議論することはないでしょう。


◆活動資金と聞こえが良いが、団体の職員の給与、団体の備品購入費、
飲食代など要は彼らが何にでも好きな様に使えるお金になります

⇒当たり前。そうでないものは活動資金とは呼ばない。
普通、NPOに寄付をすると上記の項目(フルタイム職員を雇うための人件費、
活動に必要な備品の購入、活動に伴う飲食費等)に多くが使われる。
貧困撲滅だけでなく、図書館・環境対策・教育・医療などのNPOでも同様。

NPOの定義は「事業の利益を配当還元しない」事業組織のことであって、
「無給の市民ボランティア」と激しく混同している人が多いのに
呆れてしまう。NPOの事業スタイルは普通の会社法人と大して変わらない、
というのを知らない人が多いんだろうか。


◆具体的には地球市民教育の活動資金、市民社会組織の構築活動の
資金などになります
◆そうです。貧しい国の人々へは1円も行きません

⇒非営利事業の活動資金の大半は、そういう場所に使われるのが一般的。
貧しい人に100円のパンを届けるに何万円分もの「舞台裏の活動」が
必要なのは、非営利だけでなく株式会社でも常識だ。1960年代のIBMによる
「Computer Science学部」の設立運動や19世紀末のカーネギー財団による
公共図書館の創設など、慈善事業を通じ社会的ネットワークを整備することで
大成功した営利企業は数多い。NPOうんぬんよりも、資本主義の常識に近い。


◆募金に見える、意図的にそういった印象を持たせているが募金ではない

⇒上に述べた通り、「貧しい人を救う=寄付」という発想自体がチープ。
それ以前に、活動資金集めも本来は「募金」に当たる。この文は良く分からない。


◆ホワイトバンドの価格が他国の同活動の3倍と異常に高い(Tシャツも同様)

⇒内外価格差って知ってます?特に、日本の流通・販促費用は高い。


◆バンドの売上使途を曖昧にし錯誤するよう誘導している

⇒普通、寄付の時点では使途の詳細は明確にしない。たとえば、全米最大級の
慈善財団であるケロッグ財団には「一任勘定」の莫大な寄付金が毎年寄せられ、
それを財団が個別の非営利活動に対して分配していく。寄付の時点での
使途明示よりも、年次の会計報告・活動報告の方が重要だとされている。
(株式上場と同じで、使途報告が不明瞭な団体を後から淘汰する仕組み。)


◆NGOと無関係の「PR企業サニーサイドアップ」が(広報・製造・流通)の
全般に渡り陣頭指揮を取り、金の流れをコントロールしているため信頼性が疑われる

⇒プロダクション企業が慈善キャンペーンのプロダクションマネジメントを
行うのはよくある話。一般的な会社や組織にプロダクションマネジメントの
ノウハウはまず無いため、アウトソーシングはほぼ必須になってくる。
全国的なキャンペーンの場合、広告代理店やプロダクション企業が進行管理を
担当しないことの方が稀で、この文を書いた人は全国キャンペーンの実務を
あまり良く分かっていないように思う。


◆会計報告すらない“慈善”団体が共催に含まれている。

⇒「共催」ではなく「賛同」団体。金とは関係ないのでは?


◆ホワイトバンド価格の構成が不自然で信頼性に欠け、そのデータを示す
団体の信頼性も疑われる

⇒具体的な数値や事実の記載がなく曖昧な話なので議論のしようがない。
ただし、信頼は確かにとても重要な問題。寄付は信頼に大きく依存するので、
「信頼できなければ買わない!」というのは実に真っ当な意見だと思う。
この議論の仕方には賛成できる。


◆説明の無い政治活動への誘導
◆提案する政策の妥当性の低さ
◆日本の国益を阻害する可能性

⇒ここらへんは「活動の有効性」に対する疑問であって、「募金詐欺」とは
本質的に関係ないように思う。「詐欺」とは別問題として議論すべき。
ただし議論の方向性はとても有意義で、どうして最初からこういう内容で
議論しないんだろう、と不思議な気持ちになる。


◆アメリカのONE Campaignは活動資金を調達するキャンペーンではありません。

リンク先のページに "All proceeds from the sale of ONE white bands
go to the continued education and awareness building efforts of
Americans on ONE campaign issues."って書いてあるんだけどな…。
教育と啓蒙に使うって書いてあるやん(笑)!英語はきちんと読みましょう。

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非営利事業って本当は国家の競争力を付けていく上ですごーーく大事な
ポイントで、中でも活動資金の調達は一番の中心テーマ。アメリカの大学で
世界的な大企業の社長さんや有名な財団のマネージャー達とNPO・NGOに関する
議論をすると、必ずといっていいほど活動資金集めの話になる。

そんな一方で日本の「ホワイトバンド詐欺」騒動を見てしまうと、
日本で非営利事業に対する資金調達を行うには、欧米とは全く違う
調達システムが必要になるんだろうなぁ、と思ってしまう。
「慈善」が資本主義の落とし子だとしたら、目指すは日本流の資本主義。
国内ベンチャー企業の資金集めとか、参考になる事例は多そうだ。

投稿者 kasuga : 01:16 PM | コメント (0) | トラックバック